ゲームで育む!家庭でできる子供の協力・協調性向上ガイド
はじめに
「ゲームは一人で黙々と遊ぶもの」というイメージをお持ちの保護者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現代のゲームには、複数人で協力して目標を達成する協力型ゲームが数多く存在します。これらのゲームは、子供たちが他者と協力し、共通の目的のために力を合わせる経験を積む貴重な機会を提供します。
学業だけでなく、社会生活においても他者との協力や協調性は非常に重要です。チームで課題に取り組んだり、異なる意見を持つ人々と協力して物事を進めたりする能力は、子供たちが将来を生き抜く上で不可欠な力となります。
この記事では、ゲームを家庭学習に取り入れ、子供たちの協力・協調性を効果的に育むための具体的な方法やアイデアを解説します。どのようなゲームを選べば良いのか、そして保護者はどのように子供と関われば良いのか、家庭で実践しやすいヒントを提供することを目指します。
ゲームが協力・協調性を育むメカニズム
協力型ゲームは、単に一緒に遊ぶだけでなく、プレイヤー同士が連携し、それぞれの役割を果たしながら共通の課題をクリアしていく設計になっています。この過程で、以下のような協力・協調性に関連するスキルや意識が自然と養われます。
- 役割分担と責任感: ゲーム内の目標達成のために、各プレイヤーが異なる役割を担ったり、特定のタスクを担当したりします。これにより、自分の役割を理解し、それを果たすことの重要性を学びます。
- 情報共有とコミュニケーション: 状況判断や戦略立案のために、互いに必要な情報を伝え合ったり、アイデアを交換したりします。効果的なコミュニケーションがゲームクリアの鍵となるため、自然と話す力や聞く力が養われます。
- 共通目標への貢献: チーム全体の成功が個人の成功に繋がるため、自分の行動がチームにどう貢献できるかを考えるようになります。自己中心的ではなく、チーム全体の利益を優先する視点が育まれます。
- 成功と失敗の共有: 共に困難を乗り越え、目標を達成する喜びや、失敗から学び次に活かす経験を共有します。これにより、仲間との一体感や共感が深まります。
- 他者への配慮とサポート: チームメイトが困っている時に助けたり、互いの強みを活かし弱みを補い合ったりします。他者を思いやる気持ちや、困っている人に手を差し伸べる姿勢が育まれます。
家庭での協力・協調性向上に適したゲームの種類
協力・協調性を育む目的でゲームを選ぶ際は、プレイヤー同士が競争するのではなく、協力して目標を目指すタイプのゲームに注目することが重要です。家庭での導入を想定し、いくつかの種類をご紹介します。
- 協力型ボードゲーム: デジタルゲームに抵抗がある場合や、家族みんなで集まって遊びたい場合に適しています。パンデミックや禁断の島などのゲームは、プレイヤーが協力して世界を救うという共通の目標に向かいます。カードの情報を共有したり、行動計画を話し合ったりしながら進めるため、自然とコミュニケーションが生まれます。対象年齢はゲームによって異なりますが、小学生から大人まで楽しめるものが多いです。
- 協力型テレビゲーム・PCゲーム: 一台のゲーム機やパソコンで複数人が協力してプレイできるゲームです。マリオシリーズの一部のタイトルや、Overcooked!、Minecraftなどのゲームがこれに該当します。リアルタイムで状況を伝え合ったり、互いの動きに合わせて連携したりする瞬発的な協力性が求められることがあります。視覚的に分かりやすく、子供もとっつきやすいゲームが多い傾向があります。
- オンライン協力ゲーム: インターネットを通じて遠隔地のプレイヤーと協力して遊ぶゲームです。フォートナイト(一部モード)やAmong Usなどが代表的です。これらのゲームでは、ボイスチャットやテキストチャットを用いて、より高度なコミュニケーションや戦略立案が行われます。ただし、オンラインでの他者との関わりには注意が必要であり、利用ルールやコミュニケーションの仕方について事前に家族で話し合うことが大切です。
これらのゲームを選ぶ際は、子供の年齢や興味に合わせて、難易度が高すぎず、協力する面白さを感じやすいものを選ぶことが重要です。また、ゲームの対象年齢や内容が家庭の教育方針に合っているかを確認することも忘れないでください。
ゲームを通じた学びを深める保護者の関わり方
ゲームを単なる遊びで終わらせず、協力・協調性を育む学びの機会とするためには、保護者の適切な関わりが不可欠です。
- 一緒にプレイする: 可能であれば、保護者自身もゲームに参加し、子供と一緒に協力してプレイする経験を共有してください。協力する楽しさや難しさを体感することで、子供の状況をより深く理解できます。また、保護者が手本を示すことで、効果的なコミュニケーションや役割分担の方法を伝えることができます。
- 目標設定と振り返りを促す: ゲームを始める前に「今日は〇〇を協力してクリアしよう」といった共通の目標を設定し、ゲーム後には「どうすればもっと上手く協力できたかな?」「誰がどんな良い働きをしたかな?」などと振り返りの時間を設けてください。成功体験だけでなく、失敗から学ぶ機会も大切です。
- 肯定的な言葉を選ぶ: 子供が良い協力的な行動(例:他のプレイヤーを助けた、チームのために不利な役割を引き受けたなど)をとった際には、「助けてくれてありがとう」「〇〇のおかげで助かったよ」のように具体的に褒めたり、感謝の気持ちを伝えたりしてください。これにより、協力的な行動の価値を子供は実感しやすくなります。
- 話し合いをサポートする: ゲームがうまくいかない時や、意見が対立した時には、子供たちが感情的にならずに状況を話し合い、解決策を見つけられるようサポートしてください。「どうしてそう思うの?」「他にどんな方法があるかな?」と問いかけ、思考を促すことが有効です。
- ゲーム以外の場面での協力にも目を向ける: ゲームでの協力経験を、家庭内のお手伝いや兄弟での協力、学校での活動など、ゲーム以外の現実世界の場面にどう活かせるかについて話し合ってみてください。「ゲームで友達と役割分担したみたいに、家族でも分担してみようか」のように、学びの繋がりを示唆することができます。
ある保護者の例では、ゲームで兄弟が協力して敵を倒す経験を共有したことで、それまで喧嘩が多かった兄弟間のコミュニケーションが円滑になり、「弟(兄)がゲームでこうしてくれたから、今度は自分が手伝ってあげよう」といった現実世界での協力に繋がったといいます。このように、ゲームでの成功体験が実生活での行動変容に繋がる可能性も十分にあります。
ゲーム時間と学びのバランス
協力・協調性を育む上でゲームは有効なツールですが、ゲーム時間の管理は依然として重要です。無限にゲームをさせるのではなく、事前に遊ぶ時間や曜日を決めておく、他の家庭学習や活動とのバランスを考慮するといった基本的なルール作りは欠かせません。
協力型ゲームの場合、一緒にプレイする相手がいるため、途中で中断しにくい側面もあります。ゲームを始める前に、終了時間を明確に伝え、時間になったら潔くゲームを終える習慣をつけるよう促してください。協力プレイの場合、相手への配慮も重要となるため、事前に決められた時間でプレイを終えることは、時間を守る規律性と共に、共にプレイする相手への責任感を育む機会にもなり得ます。
オンラインでの協力プレイにおいては、ゲーム内容だけでなく、コミュニケーションのマナーや個人情報の取り扱いについても親子で話し合い、安全に利用するためのルールを定めることが極めて重要です。
まとめ
ゲームは単なる娯楽としてだけでなく、子供たちの協力性や協調性といった社会性を育むための有効な手段となり得ます。共通の目標に向かって他者と協力し、役割を分担し、コミュニケーションを取りながら課題を乗り越える経験は、子供たちの将来に役立つ貴重な学びとなります。
家庭で協力型ゲームを取り入れる際は、子供の年齢や興味に合ったゲームを選び、保護者も一緒にプレイしたり、プレイ後に振り返りの時間を設けたりすることで、ゲームからの学びを深めることができます。適切な時間管理と安全への配慮も忘れずに行うことで、ゲームは子供たちの成長をサポートする力強い味方になるでしょう。
この記事が、ゲームを活用した家庭での協力・協調性育成への取り組みを始めるための一助となれば幸いです。