ゲームで育む!家庭でできる子供のやり抜く力(グリット)と成長思考の伸ばし方
保護者の皆様の中には、お子様が新しい課題に挑戦するものの、少し難しく感じたり、失敗したりするとすぐに諦めてしまうといったご経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。努力が続かない、困難から逃げてしまうといった姿を見ると、お子様の将来についてご心配されることもあるかと存じます。
しかし、こうした「困難に立ち向かい、粘り強く努力を続け、目標を達成しようとする力」や、「自分の能力は努力次第で伸ばせるという考え方」は、適切な関わりや経験を通じて育むことができるものです。そして、意外かもしれませんが、お子様が日々親しんでいる「ゲーム」が、これらの力を育むための有効なツールとなり得ることがあります。
この記事では、お子様の「やり抜く力(グリット)」と「成長思考(グロースマインドセット)」を家庭でのゲームを通じて育むための具体的な方法や、保護者の方々の関わり方について詳しく解説いたします。
やり抜く力(グリット)と成長思考(グロースマインドセット)とは
まず、「やり抜く力(グリット)」とは、困難な状況でもあきらめずに目標に向かって努力し続ける精神的な強さや粘り強さを指します。長期的な視点を持ち、情熱を持って取り組む姿勢も含まれます。
一方、「成長思考(グロースマインドセット)」とは、「人間の能力は固定的ではなく、努力や経験によって伸ばすことができる」と信じる考え方です。これに対し、「硬直思考(フィックスドマインドセット)」は、「人間の能力は生まれつき決まっており、変わることはない」と考える傾向があります。成長思考を持つ人は、失敗を学びの機会と捉え、挑戦を恐れません。
これら二つの力は密接に関連しており、特に変化の激しい現代社会において、学習や仕事、人間関係など、様々な局面で目標を達成し、より豊かな人生を送る上で非常に重要な非認知能力であるとされています。
ゲームがやり抜く力・成長思考を育む可能性
ゲームの世界には、やり抜く力や成長思考が自然と求められる要素が多く含まれています。
- 困難への挑戦と克服: 多くのゲームには、プレイヤーの前に立ちはだかる敵、解き明かすべきパズル、複雑な操作の習得など、様々な困難が存在します。これらの困難を乗り越えるためには、何度も挑戦し、失敗から学び、戦略を練り直し、粘り強く取り組む必要があります。
- 努力の結果としての成長: ゲーム内でキャラクターがレベルアップしたり、新しいスキルを習得したり、難しいステージをクリアしたりする過程は、「努力すれば報われる」「頑張ればできるようになる」という成功体験をプレイヤーに提供します。これは、まさに成長思考の根幹を養う経験と言えます。
- 失敗からの学び: ゲームで「ゲームオーバー」になったり、目標を達成できなかったりすることは日常的に起こります。しかし、多くのプレイヤーはそこで諦めず、なぜ失敗したのかを分析し、次に活かそうとします。このプロセスは、現実世界での失敗に対する向き合い方を学ぶ上で非常に有益です。
このように、ゲームは子供たちが楽しみながら、意図せずともやり抜く力や成長思考を実践的に鍛えることができる「練習場」のような役割を果たす可能性があります。
家庭でゲームを通じてこれらの力を育む具体的な方法
ゲームの教育的可能性を最大限に引き出すためには、保護者の方々の適切な関わりが重要です。以下に具体的な方法をいくつかご紹介します。
1. 子供の「努力」や「プロセス」を承認する声かけ
ゲームの結果(勝敗、スコアなど)だけでなく、そこに至るまでの子供の努力や工夫、試行錯誤のプロセスに注目し、言葉にして承認することが大切です。
- 「あの敵、何度もやられてたけど、今回は攻撃パターンをよく見てたから勝てたんだね。すごい集中力だね。」
- 「このパズル、すごく難しそうだったけど、一つずつ順番に試して解けたんだね。粘り強く考えられてえらいね。」
- 「負けちゃったのは残念だったけど、前よりキャラクターの動かし方がずっと上手になってるよ。」
このように、結果ではなく努力や過程を具体的に褒めることで、子供は「頑張ること」そのものに価値を見出すようになり、成長思考を育むことができます。
2. 失敗や挫折を乗り越えるサポート
ゲームでうまくいかなかったときこそ、やり抜く力や成長思考を育むチャンスです。
- 「残念だったね。どうしてうまくいかなかったんだと思う?」「次はどうしたらいいか、一緒に考えてみようか。」と、失敗の原因を分析し、次の行動を考えるサポートをします。
- 失敗を責めたり、「向いてない」といった否定的な言葉をかけたりすることは避けてください。失敗は恥ずかしいことではなく、学びの機会であることを伝えます。
- 保護者自身の失敗談や、困難に立ち向かった経験などを話すことも、子供にとって良いモデルとなります。
3. 挑戦しがいのあるゲームを選ぶサポート
子供の興味や現在のスキルレベルに合わせて、少し難易度の高い、あるいは長期的な目標設定が必要なゲームを選ぶことを勧めるのも一つの方法です。
- すぐにクリアできるゲームだけでなく、何度も挑戦しないと先に進めないゲームや、複雑な戦略が必要なゲーム(例:一部のパズルゲーム、戦略シミュレーション、難易度の高いアクションゲームなど)は、粘り強さを養うのに適しています。
- ただし、あまりにも難しすぎると挫折に繋がる可能性があるため、子供のレベル感を考慮し、少し背伸びすれば届くくらいの挑戦が良いでしょう。子供と一緒にゲームを選ぶ際に、「このゲームは難しそうだけど、クリアできたらすごく達成感がありそうだね」といった会話をすることも効果的です。
4. ゲームで得た学びを現実世界と繋げる
ゲームで発揮したやり抜く力や成長思考が、ゲームの中だけでなく、現実の学習や生活にも活かせることを言葉にして伝えます。
- 「あの難しいボスを何度も練習して倒したみたいに、算数の苦手な問題も諦めずに取り組めば、きっとできるようになるよ。」
- 「このゲームで新しい技を覚えるのに時間がかかったみたいに、漢字を覚えるのも最初は大変だけど、続けていれば必ず身につくんだよ。」
ゲームでの成功体験を現実の学習に結びつけることで、子供はゲームで培った粘り強さが他の分野でも役立つことを認識し、学習へのモチベーションを高めることができます。
5. 保護者自身のマインドセットを振り返る
子供は保護者の姿勢をよく見ています。保護者自身が困難にどう向き合っているか、新しいことに挑戦しているか、失敗をどう捉えているかといった姿を見せることも、子供の成長思考に影響を与えます。保護者自身も「自分の能力はこれからでも伸ばせる」という成長思考を持つことが、子供への最適なサポートに繋がるでしょう。
他の保護者の実践例
ある保護者の例では、お子様がオンライン協力ゲームで難しいミッションに挑む際、何度も失敗して悔しがる姿を見て、「一緒に失敗の原因を話し合ってみよう」と提案されたそうです。お子様はゲームのプレイ動画を見て戦略を研究し、保護者の方と会話しながら次の作戦を立てました。その結果、ミッションをクリアできた際、お子様は「難しかったけど、諦めないでよかった!」と大きな達成感を感じたと言います。この経験を通じて、お子様はゲームだけでなく、学校の勉強でも難しい問題に粘り強く取り組むようになったそうです。
また、多くの方が工夫している点として、ゲームのキャラクターがレベルアップしていく様子を、子供自身の学習の進捗に重ねて話すことがあります。「今は〇〇のレベルが△だけど、毎日少しずつ練習すれば、ゲームみたいにどんどんレベルアップできるよ」といった声かけは、子供にとって学習の「成長」をイメージしやすくするようです。
結論
ゲームは単なる娯楽としてだけでなく、お子様の非認知能力、特に「やり抜く力(グリット)」と「成長思考」を育むための有効な機会を提供し得ます。ゲームの世界で困難に挑戦し、失敗から学び、努力の結果としての成長を体験することは、お子様が現実世界で様々な壁にぶつかった際に、諦めずに立ち向かうための大切な土台となります。
大切なのは、ゲームそのものに任せきりにするのではなく、保護者の方々が子供のゲーム体験に寄り添い、努力のプロセスを承認し、失敗から学ぶ姿勢をサポートすることです。ゲームを共通の話題としながら、お子様との温かいコミュニケーションを通じて、その内なる力を引き出してあげてください。ゲームを、お子様の可能性を広げるポジティブなツールとして、賢く活用していただければ幸いです。